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チェシャ猫10のお題

01 

 赤い血の海が、アリスを飲み込もうとしていた。アリスはこの世界の全てのものに愛されているんだよと、肩に載せたアリスに呟くと、アリスは『嬉しいけど、飲み込まれるのは困るよ。底が無いんでしょ?』と、苦く笑った。
 赤い海。一歩一歩、猫が歩くたびにその想いを告げてくるのが解る。つらいの、かなしいの、いたいの、なきたいの、なけないの、あいされていないの? 愛して欲しいのどうして叶わないの。私を愛して愛して愛して。
 猫は、この赤い海が、恐らくこの世界でアリスの次に好きだ。この海はアリスの心を反映し、歪んでいく。アリスに一番近しい、アリスでないもの。ありすのことが大好きで、アリスを飲み込もうと足掻く。それも、猫が居る限り、叶わぬ事ではあるのだけれど。もしもこの海にアリスを落としてしまったら、恐らくこの海は嬉々とした様にアリスを。
「ねえ、チェシャ猫?」
「なんだい、僕らのアリス」
 香る薔薇に、猫は少し笑みを薄くする。気に食わないな、この匂いは、なんだか、あの首狂いと同じようじゃないか。
「チェシャ猫、この海は、どうして赤いの?」
 赤い海が、猫に告げる。苦しいのだと、愛して欲しいのだと、愛が欲しいのだと、つぶれてしまいそうだ、と。
 コンコン、そちらの世界の、アリス、は、元気ですか。
 クク、と、チェシャ猫は笑いを洩らした。アリスが訝しむかのようにその眉根に皺を寄せる。もう一度、チェシャ猫、と呟いた。
「・・・・・・この海が赤いのは、アリスが望んだからだよ」
「私が望むと、赤くなるの?」
「そうだよ、ここはアリスの世界だからね。ここに在るモノは全て、アリスに好きになってもらえるように、アリスの思うとおりになるんだよ」
 それじゃあもし、私が赤い海よりも青い海のほうが好きだといったら、この海は青くなるのかしら?
「アリスは、赤い海は嫌いかい?」
「嫌いじゃ、ないよ。だって、ここは私の世界でしょう?」
 間を開けて、猫はそうだね、と笑った。いつも笑っているけれど、少し、寂しそうな顔で。けれどその顔はまるでアリスには見えず、アリスは遠くの岸辺に目を凝らしていた。
 赤い海は、アリスが大好きだ。一番近しいもの。猫は、嫉妬しているのかもしれない、と、ぼんやりと思う。もしかしたら違うのかもしれない。猫は嫉妬を知らないからだ。
「アリスは、赤い海が好きかい?」
「・・・・・・・・・・うーん・・・・・・・・・・・・・。・・・・・・・うん、好き、よ・・・・」
「赤い海も、アリスが大好きだよ。この世界に存在するものは、皆、アリスが大好きだよ」
 赤い海。赤い、血の海。アリスが流した、心の痛み。
 赤い海が、喜んだ、のを、猫は知った。
『ありす、ありす、わたし、は、ありす』
 猫だけが、知った。それをアリスに教える事はないと思った。赤い海はアリスじゃないよ、アリスに一番、近いだけだ。自分に言い聞かせるように赤い血の海にその想いを流し込んで、クク、と、もう一度、猫は笑った。その分一番、アリスに遠い。君がアリスを飲み込もうとする事を、君がアリスを喰らおうとする事を、アリスはもう、知ってしまっているのだから。
「チェシャ猫?」
「着くよ、アリス」

 赤い血の海は好きだけれど、それ以上に、アリスが好きなのだ。クク。

 ああ、首狂いの城が見える。

 アリス、と、呼ぶ声が、血の海から、聞こえた。海はやはり真赤で、チェシャ猫はもう一度、クク、と笑う。



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文才の無い事。
最近、一人称とそれ以外を一緒くたに使うのが好きです。読みにくいことこの上ない上に、面倒だから読み直しすらしない罠。
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