潜りの愛

世界は俺を差し置いて、ただ嘲う。落とすのは口付けでなくて手榴弾だと噛みついてやったら、それでも構わない、お前から貰えるものなら、と云うのだから、もうこの芝居も終焉を迎えるのだろう。非常に滑稽だ。世界は知っていたのだ。知らなかったのは、彼奴だけだった。知りたがったのも彼奴で、知りたくなかったのは俺だ。彼奴の愛は俺の絶望で、彼奴は俺の幸せだけを願っていた。それが自分の幸せだなんて、どれほど逞しいやつだ。

俺は彼奴と居ることで不幸せになった。不幸せな俺をみて、彼奴は更に不幸せになる。それが俺を唯一喜ばせるとも知らないで、だ。世界も俺も知っていた、知らなかったのは、彼奴だけだった。