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 その傷ごと愛してもらえるなら、何処までも、

 愚問だ。置いたガラスのコップに映る自分の姿を見て、溜めた息をついた。ガラスが曇る。馬ッッッ鹿らしいじゃないの、どうして二人の痴話喧嘩に第三者が参加しなくちゃならないのよ。基。私はあんたたちの母親じゃないの。微妙な三角関係も、エンドレスラブも要らないからね? 大体、三人が三人とも三人のことを好いてたら、終わるわけないのよ。エンドレス以前の問題だわ。それ、終わる手応えはあるの?
「私、サスケくんのこと嫌いになってもいい? そうすれば、エンドレスじゃなくなる気がする…」
「残念だが」
「知ってる…何よ、昔は振り向きもしなかったくせに」
 好きになんてならなきゃ良かった!とガラスのコップの中身の、些か度数高めのウィスキーを煽る。それはサクラ、お前もだろう。
「はぁぁ?」
 思わず大きな声で聞き返した。
「ナルトのことなら解ってるわよ? 今でも思うわ。何であの頃の私は、あの子を愛してあげられなかったのかしら、ってね。でもそれも馬鹿らしいわ」
 だってもし昔の私がナルトのこと好きだったら、今頃サスケくん置いておいて私とナルトで幸せになってるもの。私がナルトを保護者的に愛するようになったから、一度捨てて戻ってきたあなたを迎えたのがサイ×私+ナルトだったのよ。
 そこまで殆ど一息で云うと、注いだウィスキーを半分腹内へ収める。ガラスのコップがきぃんと嫌な音を立てて、サクラは、割れてしまえば良いのに、と悪態をついた。
「ナルトを愛してるのか?」
「愚問よ。あの子以外は愛せない…とまでは云わないけど、一番があの子なのは間違いないわ」
 愚問愚問というけれど、それなら真っ当な問い掛けなんてどこに転がっているのだろう? 閉塞感にやられるのは答えが無いのを知っているからだろうか? それとも答えを探す気すらないからだろうか? 別に何だって構わないけれど。
「私はサイと幸せになるわよ。ムカつくわ小うるさいわ失礼だわ、だけど、しょうがないわよね」
「他に居ないのか、サクラ…」
 失礼だと思った。握ったコップが音をたてるくらいには、だ。
 なによそれ、他、ですって?どうせ私には7班しか無いわよ、新旧関係なく、括られるのは何時までも7班っていう名前の鎖。一番初めに繋ぎやがったのはどこの誰よ。
 ナルト曰わく「アイツは天然だから、」って、よく解る。確かに天然で人の神経逆撫でしてくれるわ。
「他、なんて要らないわよ。どうせ7班でしか息できないんだから、私」
 だから、エンドレスラブなんでしょ。そこまでいったらただの墓場だ、と云われて、喉を鳴らす。墓場。
「良いわよ別に、骨だって埋めてやるわよ。だって、それしかないんだもの」
 馬鹿みたいに傷だらけよ。もう、そういう宿命なんだわ。幸いに、嫁に行きてがあるからいいけど。そうでなかったら悲惨だ。選り取り見取りな筈なのに、引いたカードはいつだってババなのだ、とこれも馬鹿馬鹿しいことを考える。何時だって馬鹿馬鹿しいのに変わりはないけれど、私には負しかないんじゃないかしらと思うほど、サクラはいつだって不自然に幸せだ。ああ、もう、仕方ないのよ。
「私、どこまであんたたちの痴話喧嘩に入り込んだら良いの? どうせ結論なんて出てるんだから、喧嘩なんてしなくても変わらない気がするけど、それでも喧嘩するのね、あんたたちは」
 それで傷を負うのは私なんだわ。割に合わない。すっごくムカつくから内緒だけれど、だって、教えたらこの精神紳士野郎は悲しい顔して喜ぶじゃない。そんなの、癪よ。優しい癖に棄てようとしたサスケを、サクラは許さない。赦しているけれど、それではあんまりだから。誰が? そんなの決まってる。
「そういえば、原因も聞いてなかった。まあ良いか、解決なんて望んじゃないんだから」
「身も蓋もないこと云うな…」
「身も蓋もない関係なんだからしかたないわね。人生妥協も必要よ? 妥協したら、見えてくるものだってあるかも」
 サクラは妥協した。だから、見えたのだ。有り体に言えば、未来が。
 傷は塞がらないけれど、確かに自分は愛される。多少不幸ではあるかもしれないが、それほど不幸ではない。例えば、そのまあ、未来だの、に、ナルトが居なかったら、サクラは不幸を通り越して崩れ落ちてしまうと思う。予想を恐らく越えないであろうことを予感して、サクラはクスクスと笑った。私は二番目に幸せでありたい。一番は、譲るわ。
「いつだって、蟻の問渡りみたいよね。」
 渡るなら、細い道を、撰びます。
 強硬な綱があったとして、切れない保証は決してないことを知っているなら、どちらを渡っても同じだろう。同じはずだ。
 落ちて怪我をするなんて、それだって今更だろう。怪我をして、傷だらけになったって、愛してもらえるなら、だ。自己犠牲の精神に我ながら天晴れだろうと思う。


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おわらないさくらうた
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