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 密室が苦手だ。閉鎖的で、冷たくて、暗くて、独りぼっちなあの感覚が、世界に残されているのが自分だけのようで。そして、その閉ざされている扉がいつ開くのか判らない不安定さが、とても苦手なのだ。落ち着かなくなり、前後不覚に陥る。
 ヨルが来るのが怖い。ヨルが来れば家人が帰ってくる。それが、酷く、怖い。けれど逆に、いっそずっとヨルならいいとも思う。麻痺してしまった感覚が、思考が、正常に戻ることはない。そうすればきっと、閉ざされた空間やヨルを怖いと思うことは無くなるのだから。…唯、『狗』は、ヨルというものが実際にはどういうものなのかは全く知らない。それが、閉ざされた空間だ。『狗』の居る部屋には窓がない。だから『ヨル』が、『ヤミ』が、どういうものなのかは判らない。家人達が、『主』達が帰ってくるのが『ヨル』で、詰まり、だから、その「家人達が帰ってくる『ヨル』が」怖いのだ。他の『ヨル』は知らない。『ヨル』は暗く、狭く、寒いもの。
 ガタリ、と、扉の開く音がした。家人達が。主達が、帰ってきた。ああ、怖い『ヨル』が始まる。

* * *

 とてもきれいな音楽が聴こえる。隣の協会の賛美歌か?眩しい。窓から溢れてくる木漏れ日のせいだ。うっすらと目を開けると窓際に鳥がいるのが見える。餌箱に入っているパンを食べに来ているのだろう。ということは、既に餌箱に餌を入れに来た奴が居る、ということだ。今は何時だろうか。壁に掛かっている時計を見ようとして、人の姿を見つけた。

「お、起きた。ナルト、お前今日は早く起きるーっつってなかったっけか?」

 からかうよう声色に、ゆっくりと焦点を合わせていく。よく知ったこのお調子者の声は…。そこにいたのは。

「き…ば…?っつあ------…!」

 声の主を視認した途端に、頭を鈍器で殴られたような痛みが襲ってきて、ナルトその頭を腕で抱え込んだ。上から笑い声がする。睨みつけると、さらに頭に痛みが走る。目の前に星が降るようだ。

「ばーか、飲み過ぎなんだよ」
「うっせー…」

 金の髪をぐしゃりと混ぜられる。キバの『飲み過ぎ』と言う言葉を切欠に、昨日の飲み会を反芻し、朧気ながら思い出す。確かに、久しぶりの飲み会で、羽目を外してえらく飲んだ覚えは、ある。ビールビンを5本程開けたような記憶も、ある。唯、そこまでだ。そこまでの記憶しか、ない。

「あー…キバー…、今、何時だってばー…?」

 ズキズキと痛みの続く頭を庇いながら問うと、キバはにい、と口角だけを上げて笑った。八重歯が見える。

「なんだってばよ…」
「リナが出ていくのって何時だっけなあ、ナルト」
「…まさか…」
「俺は、起こしたんだぜ?」

 不適な笑みのまま、キバがこちらへ時計を向ける。

「寝坊したああああああ!」




***



「やーっぱり寝坊した!」
「うぅ…悪いってばよ…」


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