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 締め切り前にうーあー言うのは漫画家や作家で、テスト前になればうーあー言うのは、僕みたいな一学生だ。まあ、たまに例外も居るけれど。

「内人君、テスト勉強かい?」

 砦のソファに座ってテーブルに向かい、うーあー言っている内人に声をかけた創也は紅茶片手にパソコンをカタカタやっている。この例外な奴は、どうせ勉強なんてしないのだろう。故に、学生がテスト勉強に苦しむ辛さも知らない。尤もコイツが勉強したところでその成果が発揮されることはまずない。何故か、と言えば答えは簡単だ。勉強しなくとも満点をとれるのだから、結果は変わらない。憎らしいやつだ。

「明日は、国語と数学と理科…ああああもう…! 何も主要な三科目が同じ日に出ることないと思わないか?」

 素知らぬ風な創也を、内人はジト目で見る。反応がない。どうせ、お前には僕の気持ちなんて解らないさ、賢い馬鹿の冷血漢め!

「国語は、なんとかなる…! 問題は数学と理科だ…」
「一科目だけ何とかなっても仕方ないと思うけどね。……諦めたらどうかな?」

 嫌みなく、そう言う創也。嫌みが篭もってないってことは、何の含みもなく思ったことを言ってるだけなんだ。余計にムカつく。しかも最後の一言は、嫌みも含みも無かったけど代わりに憐れみが入ってたぞ。

「うるさいな、出来ないよりは一科目でも出来た方がいいし、やらないよりはやったほうが良いに決まってるだろ」

 もう放っておいてくれ! シャーペンを折らんばかりに握りしめた内人は、広げた教科書、ノートとにらめっこしている。創也がパソコンに向かったまま顎をかいた。ふむ。

「一理あるね。どうだろう内人君、僕が教えてあげようか?」
「……本当?」
「うん、僕も少し気分転換したいしね」

 ちょっとカチンとくるけど、うん、学年…というか学校でトップの創也に教えてもらえるなら、頭に入るかもしれない。

「んーじゃあ、お願いしようかな」
「それじゃあまず、数学からだね」

 広げたままの教科書。

「で、どこが解らないのかな?」

 範囲は、126ページから230ページまで。長いようだけど、実は短い。ただ、僕が一番苦手とするところなわけで、残念ながら、ありふれた台詞だとは思うんだけど、

「どこがどんな風に解らないのかすらわからない」

 言い切ってから、創也の顔を見る。あれ?

「解った」

 説教でもされるかと思ったけど、珍しいな。

「怒らないの?」
「怒る? どうして僕が怒るんだい?」

 そりゃそうなんだけど、なんで授業を聞いていて、全部わからないなんてことになるんだ、とか、それじゃあどこから教えたらいいのかもわからないじゃないか、とか、言われるかと思ったのに。
 そう言うと、創也がきょとんとした顔をする。

「解らないのは仕方ない。僕は最初から教えれば良いだけだよ」

 そうだね、最初から……はぁ。思わず溜息をついた内人に、
創也の指がテーブルを叩く。

「溜息をついている暇はないよ。とりあえず、今から君がする事は、お母さんに帰宅時間の大幅な遅れをつたえることだね」

 内人は携帯電話を取り出して、二度目の溜息とともに文字を打ち出した。




「解らない」

 公式を当てはめて解けばいいんだよ。なんて、解ってる。そんなことは、わかってる。ただ、解らない。ああ、やっぱり、何がわからないのかが、わからない。

「うー…頭痛くなってきたよ…」

 うーん、と、創也が唸る。内人君は別に読解力がないわけじゃないんだけどなあ。

「公式の使い方が解らないのかい? それとも、計算の仕方が解らないのかい?」
「公式の使い方も計算の仕方も解るけどどうして答えが合わないのかが解らない」

 進まない。一向に書き込まれることのないノートに、内人は盛大に三度目の溜息をついた。

「んーちょっと僕も気分転換! 創也、美味しい紅茶が飲みたいなー」
「まずい紅茶が飲みたいと言われても、美味しい紅茶しか入れられないからね」

 嫌みも頭に入らない。しばらくして机に置かれた温かなお茶に、内人は息を吐いた。

「ありがとう、創也」
「どういたしまして」

 一口飲む。美味しい。でも、勉強で疲れた体には少し物足りない。普段はミルクも砂糖も入れないその紅茶。体は糖分を欲している。創也はあまりいい顔をしないだろうけど、しょうがないよな。
 立ち上がった内人に、創也は首を傾げる。内人君?

「創也」
「なんだい?」
「砂糖は?」
「ないよ」

 だって僕の紅茶に、砂糖は必要ないからね。ああ、そうですとも、創也様。



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