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 トルバドゥールは変わらず、地上から離れた空を漂っていた。船室のソファで寝転ぶクイーンは自堕落にワインに口をつけている。
 テレビがついているだけの静かな船室とは打って変わって騒ぐような声がするのは、普段ジョーカーが使っているトレーニングルームだ。ジョーカーの太い声と、そして、少し甲高いような子どもの声。「わあー!」と叫びを残して、二つの声は途切れた。代わりに、クイーンの見ているテレビの音だけが流れている。料理番組からは、こちらまで香りの漂いそうなフランス料理の数々。クイーンの頭の中では恐らく今日の晩御飯がきめられているのだろう。
 船室のドアが開いて、二人が入ってくる。

「パパとわたしじゃあ、足の長さが不利だと思うんだよね。身長の違いって、大きいよ」

 束ねたストレートヘアを無造作に下ろして、ぼやく少女。あちこちに見える傷は子どもらしく木登りやかけっこをして付いたものではなく、一般人ならばデッドオアアライブさまよいます、な鍛錬をしたためのそれだ。
 ジョーカーが苦笑する。ぎこちない、けれど子どもにむける顔。少女の顔についた僅かな血を、親指で拭き取る。

「クイーンの特訓に比べたら、優しいものだと思うよ」
「そればっか」

 汗だくになっている子どもが、クイーンの座るソファにダイブした。ジョーカーに似た漆黒の髪の毛がソファに散らばる。

「汗だらけだよ、ロワ」

 傍らに身を投げ出してきた子どもの髪を梳いてやると、くすぐったそうに身をよじった。シャワーを浴びておいで、それから、昼食にしよう。

「今日はママの手作り? それとも、RDが作ってくれるの?」
「どっちがいい?」
「どっちでもいいよ、どっちだって美味しいんだから。でも、二人で作ればもっといいと思うな」

 起き上がったロワは、パタパタとプライベートルームへと向かった。クイーンはワイングラスを傾ける。

「ロワは強くなったかい?」

 半身をタオルで拭いているジョーカーは、眉間にしわを寄せる。正しくは、クイーンが飲んでいるワインに。上部の切り取られたボトルを一瞬目にうつしてから、呟いた。

「死角を見つけるのがうまくなりました」

 体術よりも暗器を使う方が好きなようです。

「あなたの身体を心配していましたよ。ワインの飲み過ぎでアルコール中毒は頂けないそうです」

 クイーンが笑いながら、ジョーカーを仰ぎ見る。飲み過ぎかな? 飲み過ぎです。

「他には、何か言っていなかったかな?」
「何か、とはなんですか?」

 クイーンが手招く。素直に屈み込むと、腕を取られて唇を重ねられた。ワインの吐息が行き渡って、身体を暖める。

「兄弟が欲しいとか」
「いいえ、…言ってたんですか?」

 深まる息の交差。水を差したのは、ロワだった。

「お昼ご飯はRDが作って、夕ご飯はママが作れば良いと思って戻ってきたんだけど…、RD、聞いてる?」

 両親の密事にはまるきり興味などないように、天井を仰ぎ見る。

[はい]
「夕ご飯までにママが動けるようになるかわからないから、夕ご飯の用意もお願いするよ」
[解りました]

 言い終わりに、一度クイーンとジョーカーに目を移す。ため息を吐いたロワが呟いた。

「部屋でやるか、船室にロックかけるかしたほうが良いよ。それと、わたし弟が欲しいな」

 別に、妹でもいいけど。
 手を振りながらドアを閉めた子どもに、ジョーカーは固まっていた。クイーンの口付けで硬直からとける。体を離そうとしたところを長い腕で絡めとられて、体制を崩した。

「クイーンッ!」
「何だい? いいじゃないか、ロワだってああ言ってるんだし。それに、子どもを作るには過程が必要なんだから」


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