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もうね、いいんですよ。
文章なんて、あとで変えるから。


サスナル←ヒナタ小説




乙女


私は、彼の隣が欲しい。


「おっヒナタじゃんか!久しぶりだってばー」

振り向くと、大好きな黄色い髪と青い目をもつ人が、悲しげな表情をしていました。

いつもと変わらない笑顔。
だけど、そこに『彼』が居ない。

「ナ…ナルト君…久しぶり…」
「聞いたってばよーヒナタ。暗部志願したらしいじゃん」
「うん、あ…ナルト君…あの、その…こっこの後…開いてる…?」
「俺ってば今暇人だから大丈夫だってばよ」

甘栗甘。他愛もないおしゃべりで時間が過ぎていく。
昔の私が何よりも欲した構図。
でも、私じゃあ本当の彼の笑顔を作ってあげられない。

「ナルト君…サスケ君は…今日忍務じゃないよね…?」

意を決して問うヒナタの目には昔絶対的なものとしてあった揺るぎがなく、ナルトは体を振るわせた。

「ナルト君…笑ってないよ…喧嘩したの…?」
「…」
「わかるよ…ナルト君が落ち込むのは…大抵サスケ君が関わってるとき…だよね

「…あーあっ女の子ってなんで鋭いんだろ!」
「え…?」
「サクラちゃんにもいのにも言われてきたってばよー」

そんなに表に出てるかなー?忍として失格じゃん!

困ったように笑うナルトに、ヒナタは首を振る。

「違うよ…。ナルト君の事を…みんな見てるんだよ…」

ナルトとサスケは上忍になって直ぐに暗部に昇格した。
いつもナルト君の…ううん、二人の背中を追いかけていた私がその道に進むか、足踏みしている間にも二人はどんどん上へと上っていく。

いつだったか、彼らと同じマンセル仲間だった桃色の髪の少女が言っていた。

『私、ナルトとサスケ君の半運命共同体になりたいの』

ひたすら夢に突き進むナルト君と、ナルト君の目指すものの隣を目標とするサスケ君。
彼女はその一歩後ろで、支え、支えられながら居たいと、言っていた。

『もちろん、現在進行形でね』

「私が…ナルト君の運命共同体になりたいっていったら、ナルト君は…どうする…?」
「え…?…っと」
「うん…困るよね…。」

判ってるの。
私とあなたじゃ、求めるもの、目標とするものが違う。
だから、運命を共にすることは出来ない。
私はあなたの一番にはなれないことも、あなたの一番は他にいるってことも。
サスケ君ですら、ナルト君の一番にはなれないんだもの。
ナルト君の一番は、ナルト君自身だから。

「わ…私が求めるものは、サスケ君に、近い、と、思う…の」
「イヤイヤイヤ!ヒナタとアイツじゃ似ても似つかねーってばよ!」
「違う、の」

私は、ナルト君の隣に居たいの。
私が、ナルト君に笑顔をあげたいの。
だから本当は、彼が疎ましい。
私が進むことを拒んでしまう荊の道を、いとも簡単に進んで行く。
彼の、ほんの少しだけ後ろで、軌道を修正してあげられるように。

「あ…ナルト君、後ろ…」
「ん?わ、アイツってば機嫌悪そーな顔してるってばよ」
「ご、ごめんね…」
「ヒナタが謝る事なんてなんもねえってばよ」

古い音をさせてドアを開けると、まるでこの世の終わりみたいな顔をしたサスケが居た。

「帰るぞ」
「あ、ま、待ってサスケ君…」
「ヒナタ?」
「サスケ君と、ちょっとお話したいの」
「…」
「俺ってばそこで待ってるから、終わったらこいってばよ」

指した電信柱までナルトが走っていってしまうと、ヒナタは口を開いた。

「サスケ君…私、ナルト君が好きなの。笑顔が。サスケ君がナルト君と恋人どうしなのは知ってる。それでも、いつか、私がサスケ君よりも強くなったときに…」

俯いていた顔を上げた時、そこには、昔の物事すべてにオドついていたヒナタの姿はなかった。

「変わったな」
「ナルト君のおかげだよ」
「お前がどんなに強くなっても、ナルトは渡さねえ」
「渡さしてもらうんじゃ、ないよ。…奪うの…その位置を」
「やれるもんならやってみな…けどな、アイツはお前のもとには行かないぜ?」
「…どうして?」
「さあな…アイツの隣を奪取する事を諦めたら、教えてやっても良いけどな?」
「…別に、いいよ……」

一瞬、風が吹いて二人の周りの時を止めた。
次に風がやんだとき、ヒナタは後ろを向けて走っているところで、サスケは息をつくと電信柱へと向かうのだった。

「うかうかしてられねえな」
「何がだってば?」
「何でもねえよ…それより、手前が半壊させたうちの蔵、ちゃんと直すの手伝えよ」
「わーかってるってば!」

  ---

「っ…まだ足ガクガクして…る…」

でも、言えた。



ナルト君が幸せなら、それでいいよ。
でもね、ナルト君を幸せにしてあげられるのは、私が良い。

だから私はナルト君の隣を欲するの。
それがたとえどんなにに無謀だとしても。








スクランブルビート

「バカじゃねぇの」

 振り上げた腕をがしりと捕まれて、そこを舐め上げられていたときにナルトはつぶやいた。

 吸い付いてくるサスケを引き離そうとして無理に腕を暴れさせていると、取られていた腕をガリと噛まれた。
 だらだらと流れる紅が傷の深さを物語っている。
ナルトは顔をしかめた。

「血ィ出たんだけど」
「安心しろ消毒してやるから」
「バイキンはいるってばよ」

 最後の言葉は聞こえなかったのか、聞き流したのか。
 反応せずにひたすらに流れる血を舐めつづけるサスケを見て、狂っていると思った。
 サスケも、だけど、他ならない自分自身が。

「こういうのを『ユーエツカン』っていうのか?」
「優越感はいつから外国の言葉になったんだ?日本語くらいしっかり読めるようになりやがれ」
「うるせーばーか」

 唾液にまみれた腕を未だにしゃぶっているような男に言われたくない。

 ポカリと頭を殴ってやると、やっとこさ腕から顔を上げたサスケが今度はその蒼の瞳を悩ましそうに眺める。

 このまま行ったら眼球まで溶かされてしまいそうだ。
 ナルトは顎に力を込めて舌の皮に歯を立て、ピリと痛みが走ったのと同時にその舌でサスケの頬を舐める。
 赤い印がついたナルトのように丸くもない頬にもう一度舌を乗せて勢いのままに薄ピンクの開かれた口にそれを差し込んでやった。

 合わせるだけの口づけが段々と深さを増していく。
 その刹那、サスケがちらりと見やったナルトの腕にはもう傷痕はなく、狂ったように口元に溢れる唾液を飲み込むサスケの目に映ったのは、狂ったように息と快楽を貪るナルトの姿だった。


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