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 ナルトが死んでしまってから、サクラはあまり、笑わなくなった。

「サクラ、サクラ、墓参りに行こう」

 サスケの声に、サクラはニコリと微笑んだ。その顔にはいつからか沢山の皺が刻まれている。いつから? わかりきっている答だ。
 サイとサスケが傍らについて、サクラを挟むように歩いていた。どちらも手を握って、かたく握って。
 遠くに、墓が見える。慰霊碑。そしてその隣に、小さな砂山。サクラは、二人の手をやんわりと離した。な、る、と。

「なると、来たわよ。逢いに。サスケ君も、さいも、いっしょ」

 スカートが汚れるのも気にせずに、膝をついて、掌をついて、小さな山に語りかける。昨日は、サイとね、甘栗甘に行ったのよ。あんみつ食べたの。美味しかったわ。その前はね、サスケ君に、洋服買ってもらっちゃった。緑。そう、このスカートよ。

「ナルト、ナルト、また来るからね」

 大好きよ。
 サクラは皺を深めてにこりと笑うと、土の山に口付けを落とした。サイが、顔を上げたサクラの唇を、親指で拭ってやる。じいさんになったわね、とくすくす笑われて、君はばあさんだ、と、笑い返した。

「サスケ君」
「ああ?」
「じいさんになったわね」

 くしゃり、と撫でられた髪の毛に、サクラが少し眉をひそめた。

 前を歩くサクラを見て、二人は顔を見合わせた。良かったな、連れてきて。
 実際のところ、サクラの短期記憶はもう、殆ど続かない。ナルトが、死んでからだ。ナルトで繋がっていた。そして、今もナルトで繋がっている。脆い絆。そして、何よりも強い絆だ。七班にとっては、何よりも。

「なあ、サクラ」
「なあに?」

 振向いた彼女に映るのは、恐らく、ナルトの隣に居た、二人だ。
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