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2008.07.15 Tue 10:10:38
「兄に言われた。会うなと言われた。だから、会えない。もう、会わない」
赤の帽子を目深に被ると、少年は呟いた。夕暮れを過ぎた夜闇の香りが、少年を包む。少年の目の前に立つ男は、何も言わない。少年は、ぎゅう、と手を握り締めた。男の、ではない。自分のだ。兄を思う。父も母も、少年を深く愛してはくれなかった。兄だけがただ、少年を見てくれていた。殴られて、殴られて、泣きたくなる。けれど、兄は優しい。兄は、優しい。誰より、だ。
きびすを返した少年は、言葉を飲み込んだ。言わないのか? 兄が俺より大切なのか、と。俺より兄を愛しているのか、と。兄に悟られず会うことすら叶わないのか、と。
開いた口から小さく、あ、と漏れて、少年は耳まで紅く染まる。選んだ。兄を。今更、何だ。静寂が辺りを包み、少年は足に力を込める。刹那、その細身は男に抱きすくめられた。赤い帽子を取り上げられ、紅い耳を食まれる。もがく身体を押さえ込み、男は耳元で呟いた。
「兄が俺より大切なのか? 俺より兄を愛しているのか? 兄に悟られず会うことすら叶わないのか?」
「な……! 何をッ……!」
すん、と、少年の頭の上で男が息を吸った。
「言って欲しかった言葉だろう?」
「寝言は、寝て言え……!」
「隣に寝てくれるなら幾らでも」
陰に連れ込むわけでもなく、闇に包まれたとはいえ、往来で。止めろ。少年は身体を突っぱねる。大丈夫だ。何が大丈夫だって……、お前は可愛い。一見しただけでは、到底男には見えないからな。フォローのつもりかうれしくない!
「放せ!」
「放したら居なくなることが解っているのに、放すわけがない。放して欲しくなどない癖に、もう少し素直になればいいのにな」
そこも、好きだと思うけれど。なんて、優しくもない。想うなら、放せ。断る。何故。想う以上に、焦がれている、放してしまえば居なくなるのに、放してしまっては俺は誰を抱き締めればいい? 知るか、女を探せばいい。確かに、女には困らないだろうな、この容姿だ。馬鹿の癖に。……。
「女じゃ駄目だ」
「なら、男でいいじゃないか」
「否……女だろうが男だろうが構わない。お前であれば」
現世まで、幾世も辿った。いつでも俺はお前と共にいた。長い間だ。そろそろ肯け。覚えていない? 嘘を吐け。
少年は俯いた。声は途切れず言の葉を紡ぐ。
「一途だろう? 俺にしておけ。兄は諦めろ。隠す必要もない。俺はお前の兄貴と互角以上に戦うぞ」
馬鹿の癖に。少年の呟きは、男に飲まれた。
「ッ……手が早い馬鹿! バーカ! バーカ!」
「早いものか。何百年待ったと思っている? 自分の奥手さに苛々する。けれど、もう、手放さない」
「兄さんがいるんだぞ」
「兄貴がなんだ? 俺はお前を愛している」
後ろ向きに取られた顎で、少年は息を飲む。大分人間らしくなった男に、少年は少し安堵し、少し、寂しいと思った。
---------------
萌えを発散しないと次の話に移れないんだこれが。後悔はしていない。反省もしていない。ただやっちまった感はある。
ああ。
赤の帽子を目深に被ると、少年は呟いた。夕暮れを過ぎた夜闇の香りが、少年を包む。少年の目の前に立つ男は、何も言わない。少年は、ぎゅう、と手を握り締めた。男の、ではない。自分のだ。兄を思う。父も母も、少年を深く愛してはくれなかった。兄だけがただ、少年を見てくれていた。殴られて、殴られて、泣きたくなる。けれど、兄は優しい。兄は、優しい。誰より、だ。
きびすを返した少年は、言葉を飲み込んだ。言わないのか? 兄が俺より大切なのか、と。俺より兄を愛しているのか、と。兄に悟られず会うことすら叶わないのか、と。
開いた口から小さく、あ、と漏れて、少年は耳まで紅く染まる。選んだ。兄を。今更、何だ。静寂が辺りを包み、少年は足に力を込める。刹那、その細身は男に抱きすくめられた。赤い帽子を取り上げられ、紅い耳を食まれる。もがく身体を押さえ込み、男は耳元で呟いた。
「兄が俺より大切なのか? 俺より兄を愛しているのか? 兄に悟られず会うことすら叶わないのか?」
「な……! 何をッ……!」
すん、と、少年の頭の上で男が息を吸った。
「言って欲しかった言葉だろう?」
「寝言は、寝て言え……!」
「隣に寝てくれるなら幾らでも」
陰に連れ込むわけでもなく、闇に包まれたとはいえ、往来で。止めろ。少年は身体を突っぱねる。大丈夫だ。何が大丈夫だって……、お前は可愛い。一見しただけでは、到底男には見えないからな。フォローのつもりかうれしくない!
「放せ!」
「放したら居なくなることが解っているのに、放すわけがない。放して欲しくなどない癖に、もう少し素直になればいいのにな」
そこも、好きだと思うけれど。なんて、優しくもない。想うなら、放せ。断る。何故。想う以上に、焦がれている、放してしまえば居なくなるのに、放してしまっては俺は誰を抱き締めればいい? 知るか、女を探せばいい。確かに、女には困らないだろうな、この容姿だ。馬鹿の癖に。……。
「女じゃ駄目だ」
「なら、男でいいじゃないか」
「否……女だろうが男だろうが構わない。お前であれば」
現世まで、幾世も辿った。いつでも俺はお前と共にいた。長い間だ。そろそろ肯け。覚えていない? 嘘を吐け。
少年は俯いた。声は途切れず言の葉を紡ぐ。
「一途だろう? 俺にしておけ。兄は諦めろ。隠す必要もない。俺はお前の兄貴と互角以上に戦うぞ」
馬鹿の癖に。少年の呟きは、男に飲まれた。
「ッ……手が早い馬鹿! バーカ! バーカ!」
「早いものか。何百年待ったと思っている? 自分の奥手さに苛々する。けれど、もう、手放さない」
「兄さんがいるんだぞ」
「兄貴がなんだ? 俺はお前を愛している」
後ろ向きに取られた顎で、少年は息を飲む。大分人間らしくなった男に、少年は少し安堵し、少し、寂しいと思った。
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萌えを発散しないと次の話に移れないんだこれが。後悔はしていない。反省もしていない。ただやっちまった感はある。
ああ。
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