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 螺旋階段のように続く細くて長い道。黒く鈍よりとした空気に灼熱の如く熱い追い風。何を飲み込もうとしているの、溶けてしまいそうな思考、モノローグにすら点火された炎はさらに勢いを増して飲み込んでいく。何を?思考を。


 リボンを頂いた。もう思い出すのも億劫な昔の話だけれど、ふと思い出した。真っ赤なリボンで、首輪のようなものにくっついていて。それが私の首に掛けられたから、私はあの時にすでにペットにされたも同然だったわけだ。『赤いリボンが良く似合ってよ』『ありがとうございます』何度繰り返したか知れない言葉の応酬。嘆く?そんなことすら知らなかった何時かの私は、それでもそこそこ上手く天秤をとっていた。左右に傾く、危うい感覚。
 ペットは、特に犬は主が居なくなっても主を慕うものだという。確かにその通りだと思う。だって、私がそうだから。
 お母様を愛していた。お父様は殺してやりたいくらい憎かった。お母様は私のものなのに、独り占め出来ない。何時だって、私はお父様の後、私は二番目。苛立ちは募って、けれど、私はお父様に笑い掛け続けた。そうするとお母様が笑うのを知っていたから。
 リボンは、お父様から頂いた。『お母様には内緒だよ』口元に当てられた人差し指。噛みきってしまおうかと思った。『わあ、ありがとうございます、お父様。お母様には内緒…ね?』くすくすと二人で笑いあって、私はこみ上げてきた殺意をどうにか心の奥底にしまい込んだ。リボンのことは直ぐにお母様にバレてしまって、私とお父様は二人で眉間に皺を寄せて苦笑いし合った。


 お母様を愛している私と、お父様を愛しているお母様、私を愛しているお父様。奇妙な天秤。私達はそれなりに幸せだった。


 お母様は、私を嫌っていた。もしかしたら、嫌っていた、というのは語弊があるかも知れないけれど。
お母様は、少なくとも私を苦手としていた。

 私を嫌うお母様、お父様を嫌う私、何方も愛するお父様。保たれていたその天秤を壊したのは、他でもない…。

* * * * * *

 

「お父様、お父様は私が好き?」
「好きだよ、なんだ、変な子だなあ…」
「いいの。…それじゃあ、お母様と私を比べたら、何方の方が好き?」


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