カレンダー
カテゴリー
最新CM
リンク
最新記事
(09/04)
(02/27)
(03/12)
(03/02)
(01/04)
最古記事
アーカイブ
ブログ内検索
2025.03.05 Wed 11:43:01
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
2008.02.17 Sun 10:07:44
ふう。ヤウズがため息をついた。瓶がカチャカチャと鳴る音がする。ヤウズが右手に下げたビニール袋からだ。まったく、あのジジイはどうして自分で動かないかな…。などと考えてみたところで無意味だ。何故なら「あのジジイ」というのが、彼の名高い大怪盗、「皇帝」だからである。尤も、現在は既に引退した身だけれど。酒瓶が擦れる。
「ただいま…」
もう一度ため息をつくと、奥まった部屋へと向かう。気配は、ヤウズが酒を買いに出て行ってから全く動いていないようだ。
ドアを開けると、室内にも関わらずサングラスをかけた老人が玉座のようなものに座っている。ちんまりとしたその容姿に見合わない、老人の頭ほどもあるワイングラス。それを、優雅に持つ。行く前と変わったところはないように思えた。
「遅い。遅いぞ、小僧」
言葉と同時に何か固形のものが飛んでくる。ヤウズの眉間目掛けてとんできたそれは、胴体視力の割と良いヤウズにも確認することはできない。危険かと思ったのは一瞬で、殺気のこもっていない飛来物を、ヤウズは左手で受け止める。
「お前が出てってから何分経ったと思ってんだ」
手にあるものを覗く。飛んできたものは、時計だった。小さな懐中時計がヤウズの手中でカチカチと動いている。
「四十分じゃねえか」
そのうち三十分は、あんたの仕掛けた罠にはまらないように玄関から此処まで来るための時間だしな!
この、皇帝の住む屋敷は人里離れた森の奥にある。普通ならば、行って帰るのに十分では無理だ。
ったく。
「酒、買ってきた」
言い終わる前にヤウズの右手に下がっていたビニール袋と左手に持っていた懐中時計は皇帝の元に移動している。
ったく。
皇帝が、酒瓶を開けようとしていた手を、ふと止めた。ヤウズは首を傾げる。銘柄は間違えていないはずだ。
スコン、と小気味いい音がして、ヤウズの眉間に一枚の封筒が刺さる。
「何すんだ!」
「お前に手紙だ」
「…? 俺に?」
皮を一枚だけ貫くように、大した痛みもなく刺さっている封筒を眉間から抜き取る。皮膚にかするくらいにしか刺さっていないはずなのに、抜き取るには少し力を入れなければならなかった。
「お前にだ。まったく、お前みたいなやつにも手紙を送り会う仲の友達がいたなんてなあ」
皇帝が早速瓶を開けて、ごくごくと呑みながら笑った。手紙? ヤウズの方が、皇帝よりも大分驚いている。差出人も宛名も書いていないし、第一ここにヤウズ住んでいることを知っているのなんて一握りだ。
というか、ここって手紙、届くんだな…。
訝しみがら封を開ける。と、ヤウズが手を止めた。
「なあ、どうしてこれが、俺への手紙だなんて解ったんだ?」
宛名も差出人もない封筒。ヤウズの質問に、皇帝は仙人のように、カッカッカと高笑いした。そして、得意げにこういった。
「大怪盗の勘だな!」
そうか、怪盗は勘でそんなことまで解るのか。
皇帝が聞いたら「怪盗じゃねえ、宇宙一の大怪盗だ!」と言うだろう。けれど、ヤウズは気にしない。
少し尊敬しながら、封筒から手紙を取り出す。そこで、またヤウズの手が止まった。
「なあ、ジイさん、これはなんだ?」
言いながら、ヤウズが指差したのは手紙の端に付いた染みだった。
「…何って、手紙だろう。なんだ、もしかしてお前は手紙も知らねえのか?」
やれやれ、と肩を竦めて見せる皇帝。
「ジイさん、開けたんだろ、この手紙」
皇帝が一瞬、ピクリとする。ヤウズはそれを見逃さない。
開けたんだな。
「開けた痕跡を残さないのは流石だけど、ワイン零してちゃなあ」
「待て待て待て、その染みは差出人が付けたのかも?」
「紙が湿ってる。それに、これは、あんたがいつも呑んでるワインの匂いだ」
不本意ながら、ヤウズは皇帝の呑んでいるワインの匂いを覚えてしまった。幾つか好んで呑んでいるものがあるけれど、このワインはその中でも皇帝が気に入っているものだ。
「それに、このワインはそうそう手に入るものじゃない」
ヤウズが知っている中で、このワインを手に入れることが出来るのは、目の前にいる皇帝くらい…。いや、ヤウズはもう一人知っている。
「ジイさんの手先の器用さを考えたら、封筒を綺麗に切って中身を読み、また中に戻して、切断面を糊でくっつけることくらい簡単だろ?」
すねたように、押し黙る皇帝。
「…まあいいや。誰からだろう?」
ヤウズは手紙に意識を戻して、手紙を開く。手紙にはこう書いてあった。
『拝啓、ヤウズ様。クイーンです。元気かな? 私は今、ノミ取りの仕事をしながらこの手紙を書いています。ノミ取りは実に奥深いものです。ところで、私がヤウズ様に手紙を書いたのは、親愛のしるしを示すためです。良い友が、親愛する人には手紙を出すものだと教えてくれました。では、他に特別書くこともないので、この辺りで失礼します。敬具。…追伸、恐らく、この手紙をヤウズ様より先に読むであろうお師匠様に、あなたには親愛の念などひとかけらもないことをお伝え下さい! Queen』
頭がガンガンする。クイーン?
「クイーンがどうして俺に手紙を寄越すんだよ…」
「親愛のしるしだろ」
立ち直りの早い皇帝が呟く。既にその手には二本目の日本酒が握られている。
「親愛って…」
あれ?
ヤウズは、一度閉じた手紙をもう一度開く。ワインの染みだ。けれど、こちらは乾いている。匂いを嗅いでみると、皇帝の付けたワインの染みと同じものだ。でも…?二滴も三滴もワインを零していたら、いくら皇帝でも、いや、皇帝じゃなくとも気付くはずだ。ということは…
「この染みは…クイーン…?」
「ああ、あのワインなら、クイーンも好きだぜ?」
何故だか、背中に悪寒が走ったような気がして、ヤウズは後ろを振り返る。当然、後ろには誰も居ない。
「小僧、何か旨い摘みが欲しいな」
…ったく…。
「解ったよ…」
手紙を握って、ヤウズは部屋を出る。そして、ため息をついた。
「お師匠様、いたずらにヤウズ君を怖がらせるのはどうかと思いますよ?」
皇帝が、悪いものでも吐き出すように呟く。
「お前みたいな悪趣味な奴にいわれたかねえな」
ぴょん、と、皇帝が天井からテーブルに落ちた。
「大体、今回はお前がどうしてもっていうから、この、『大怪盗皇帝』の名を貸してやったんじゃねえか。感謝されこそすれ、文句言われる筋合いはねえだろう」
皇帝がそういうと、もう一人の皇帝--クイーンが両手を挙げた。
「はいはいそうですね、ありがとうございましたお師匠様!」
半ばヤケクソで言うクイーンに、皇帝がフン、と鼻を鳴らす。
「それじゃあ、これはお礼のお酒です」
箱に詰まった酒を皇帝の前に置くと、皇帝がニコニコと人の良さそうな笑みを浮かべた。ただ卑しいだけだけれど。
「今日はありがとうございました。また会う日まで。…お師匠様がお元気に生きてらっしゃることを祈っています」
最後の一文に、憎しみのようなものをこめて、クイーンは部屋のドアをあけた。
「シジイー、摘みってどんなのが…」
言葉に詰まったヤウズの目の前に、銀髪が広がる。「あでぃおす」聞こえた気がした。
一陣の風が吹く。
***
クイーンも皇帝(アンプルール)もヤウズも難しいよ文才下さい…!
でもとりあえず全部携帯で打ったんだぜ(´∀`)
意味が分からない?そんなの感じ取ってよ。
つじつまが合わない?脳内補完してよ。(最低)
「ただいま…」
もう一度ため息をつくと、奥まった部屋へと向かう。気配は、ヤウズが酒を買いに出て行ってから全く動いていないようだ。
ドアを開けると、室内にも関わらずサングラスをかけた老人が玉座のようなものに座っている。ちんまりとしたその容姿に見合わない、老人の頭ほどもあるワイングラス。それを、優雅に持つ。行く前と変わったところはないように思えた。
「遅い。遅いぞ、小僧」
言葉と同時に何か固形のものが飛んでくる。ヤウズの眉間目掛けてとんできたそれは、胴体視力の割と良いヤウズにも確認することはできない。危険かと思ったのは一瞬で、殺気のこもっていない飛来物を、ヤウズは左手で受け止める。
「お前が出てってから何分経ったと思ってんだ」
手にあるものを覗く。飛んできたものは、時計だった。小さな懐中時計がヤウズの手中でカチカチと動いている。
「四十分じゃねえか」
そのうち三十分は、あんたの仕掛けた罠にはまらないように玄関から此処まで来るための時間だしな!
この、皇帝の住む屋敷は人里離れた森の奥にある。普通ならば、行って帰るのに十分では無理だ。
ったく。
「酒、買ってきた」
言い終わる前にヤウズの右手に下がっていたビニール袋と左手に持っていた懐中時計は皇帝の元に移動している。
ったく。
皇帝が、酒瓶を開けようとしていた手を、ふと止めた。ヤウズは首を傾げる。銘柄は間違えていないはずだ。
スコン、と小気味いい音がして、ヤウズの眉間に一枚の封筒が刺さる。
「何すんだ!」
「お前に手紙だ」
「…? 俺に?」
皮を一枚だけ貫くように、大した痛みもなく刺さっている封筒を眉間から抜き取る。皮膚にかするくらいにしか刺さっていないはずなのに、抜き取るには少し力を入れなければならなかった。
「お前にだ。まったく、お前みたいなやつにも手紙を送り会う仲の友達がいたなんてなあ」
皇帝が早速瓶を開けて、ごくごくと呑みながら笑った。手紙? ヤウズの方が、皇帝よりも大分驚いている。差出人も宛名も書いていないし、第一ここにヤウズ住んでいることを知っているのなんて一握りだ。
というか、ここって手紙、届くんだな…。
訝しみがら封を開ける。と、ヤウズが手を止めた。
「なあ、どうしてこれが、俺への手紙だなんて解ったんだ?」
宛名も差出人もない封筒。ヤウズの質問に、皇帝は仙人のように、カッカッカと高笑いした。そして、得意げにこういった。
「大怪盗の勘だな!」
そうか、怪盗は勘でそんなことまで解るのか。
皇帝が聞いたら「怪盗じゃねえ、宇宙一の大怪盗だ!」と言うだろう。けれど、ヤウズは気にしない。
少し尊敬しながら、封筒から手紙を取り出す。そこで、またヤウズの手が止まった。
「なあ、ジイさん、これはなんだ?」
言いながら、ヤウズが指差したのは手紙の端に付いた染みだった。
「…何って、手紙だろう。なんだ、もしかしてお前は手紙も知らねえのか?」
やれやれ、と肩を竦めて見せる皇帝。
「ジイさん、開けたんだろ、この手紙」
皇帝が一瞬、ピクリとする。ヤウズはそれを見逃さない。
開けたんだな。
「開けた痕跡を残さないのは流石だけど、ワイン零してちゃなあ」
「待て待て待て、その染みは差出人が付けたのかも?」
「紙が湿ってる。それに、これは、あんたがいつも呑んでるワインの匂いだ」
不本意ながら、ヤウズは皇帝の呑んでいるワインの匂いを覚えてしまった。幾つか好んで呑んでいるものがあるけれど、このワインはその中でも皇帝が気に入っているものだ。
「それに、このワインはそうそう手に入るものじゃない」
ヤウズが知っている中で、このワインを手に入れることが出来るのは、目の前にいる皇帝くらい…。いや、ヤウズはもう一人知っている。
「ジイさんの手先の器用さを考えたら、封筒を綺麗に切って中身を読み、また中に戻して、切断面を糊でくっつけることくらい簡単だろ?」
すねたように、押し黙る皇帝。
「…まあいいや。誰からだろう?」
ヤウズは手紙に意識を戻して、手紙を開く。手紙にはこう書いてあった。
『拝啓、ヤウズ様。クイーンです。元気かな? 私は今、ノミ取りの仕事をしながらこの手紙を書いています。ノミ取りは実に奥深いものです。ところで、私がヤウズ様に手紙を書いたのは、親愛のしるしを示すためです。良い友が、親愛する人には手紙を出すものだと教えてくれました。では、他に特別書くこともないので、この辺りで失礼します。敬具。…追伸、恐らく、この手紙をヤウズ様より先に読むであろうお師匠様に、あなたには親愛の念などひとかけらもないことをお伝え下さい! Queen』
頭がガンガンする。クイーン?
「クイーンがどうして俺に手紙を寄越すんだよ…」
「親愛のしるしだろ」
立ち直りの早い皇帝が呟く。既にその手には二本目の日本酒が握られている。
「親愛って…」
あれ?
ヤウズは、一度閉じた手紙をもう一度開く。ワインの染みだ。けれど、こちらは乾いている。匂いを嗅いでみると、皇帝の付けたワインの染みと同じものだ。でも…?二滴も三滴もワインを零していたら、いくら皇帝でも、いや、皇帝じゃなくとも気付くはずだ。ということは…
「この染みは…クイーン…?」
「ああ、あのワインなら、クイーンも好きだぜ?」
何故だか、背中に悪寒が走ったような気がして、ヤウズは後ろを振り返る。当然、後ろには誰も居ない。
「小僧、何か旨い摘みが欲しいな」
…ったく…。
「解ったよ…」
手紙を握って、ヤウズは部屋を出る。そして、ため息をついた。
「お師匠様、いたずらにヤウズ君を怖がらせるのはどうかと思いますよ?」
皇帝が、悪いものでも吐き出すように呟く。
「お前みたいな悪趣味な奴にいわれたかねえな」
ぴょん、と、皇帝が天井からテーブルに落ちた。
「大体、今回はお前がどうしてもっていうから、この、『大怪盗皇帝』の名を貸してやったんじゃねえか。感謝されこそすれ、文句言われる筋合いはねえだろう」
皇帝がそういうと、もう一人の皇帝--クイーンが両手を挙げた。
「はいはいそうですね、ありがとうございましたお師匠様!」
半ばヤケクソで言うクイーンに、皇帝がフン、と鼻を鳴らす。
「それじゃあ、これはお礼のお酒です」
箱に詰まった酒を皇帝の前に置くと、皇帝がニコニコと人の良さそうな笑みを浮かべた。ただ卑しいだけだけれど。
「今日はありがとうございました。また会う日まで。…お師匠様がお元気に生きてらっしゃることを祈っています」
最後の一文に、憎しみのようなものをこめて、クイーンは部屋のドアをあけた。
「シジイー、摘みってどんなのが…」
言葉に詰まったヤウズの目の前に、銀髪が広がる。「あでぃおす」聞こえた気がした。
一陣の風が吹く。
***
クイーンも皇帝(アンプルール)もヤウズも難しいよ文才下さい…!
でもとりあえず全部携帯で打ったんだぜ(´∀`)
意味が分からない?そんなの感じ取ってよ。
つじつまが合わない?脳内補完してよ。(最低)
PR
Comments
Trackbacks
TRACKBACK URL :