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 男は確信する。古きものは、循環し、新しくなるのだ。と。
 まず、一言目は「俺、俺」だ。相手方が名前をうっかり呼んでしまえば、こちらのものである。次の言葉は決まったようなものだ。事故を起こした。ヤクザの車を傷付けた。殺されるかもしれない。金を振り込んでくれ。よし、行くぞ。

 男は別に、根からの悪人ではない。ただ、借金に目も頭も足下もくらくらと眩み、されど働く宛もなく、致し方なく詐欺に手を染めようとしているだけである。まあ、致し方なくと言っても、男は未来の犯罪者であり、悪いのはパチンコスロットに明け暮れた自身なのだが。とはいえ、見てみるがいい、あの無精髭にまみれた、如何にも仕事に採用して頂けなさそうな顔を。そして、電話のボタンに伸ばされる、震える手を。見るからに残念ではないか。可哀想ではないか。幾ら悪いのが自身であったとしても、同情の念を禁じ得ない。その風体を見れば、これから電話をかける家すら、致し方ないと思ってくれる。やもしれない。無理か。
 男は震える手を伸ばす。がちゃり。耳に受話器を当て、生唾を飲み込むとボタンを押そうと指に力をこめた。

『ちょっと、居留守使うんじゃないよ! 居るんじゃないか! まったく。アンタ明日には電気も止められるから覚悟しときな! 大体アンタ、家賃だって』

 ガチャン! ええええ……! 男は驚愕しすぎてその受話器を本体に叩きつけるように置いた。心臓は弁が誤作動を起こすのではと思うほどに早鐘打っている。最早ツーステップで鐘連打だ。小心者な男はえらい勢いで大して広くもない部屋の壁まで後退した。ええええ……!

「な、えッ、だッ、えッ、……えッ?!」

 かけてもいない受話器から恐らくは大家と思われるどぎついおばはんの声がすれば、まあ、対外びっくりするものだ。しかも、犯罪に手を染めるまさにその時ともなれば、心臓萎縮である。

***

眠い
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