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倦怠感、喪失感、浮遊感。
透き通るような肌、というか、実際、透き通る肌。
如何してしまったんだろう、私の身体は。
下を見上げれば、恐らくは私の『本体』。
上を見上げれば、屋根裏の見える、部屋。
時計、携帯、枕、掛け布団、手に取れるものは一つもない。
思考は働く、ということは、どういうことだ?
精神は繋がっている。
下に見える私の体と、今の私の身体は足元で繋がっている。
なにやら、白いもやもやとしたもので。
寧ろ、精神だけの存在、というやつだ。
私は唯の平凡な女子中学生で、今日は、何もない、唯の『日』。
いや、何もないわけじゃない。
今日は、・・・今日は・・・・・・?
違う。何もない、唯の日。
そのはずなのに、何かが引っかかる。
ような気がする。
精神だけの存在で、煩わしい肉体がない分思考だけははっきりするだろうに、私の頭ときたら思うように動いてくれない。
混乱しているらしい。
兎に角、私には『こんな風』になる原因なんて、思い浮かばない。
本体の胸が上下に動いている所を見ると、生きている、の、だろう。
ああ、まだ、やっていないことが沢山・・・・・ないけれど、やりたいことがいっぱい・・・・・ない・・・・・・。
それでも、頑張って本体にダイビングしようとして、失敗する。
戻れなかったら、私、明日のドラマ見られな・・・・いこともないのか。
欲がないらしい私は、だから、戻れないのかもしれない。

『ゆかー?』

扉の向こうから、母親の声が聞こえた。
『なぁに、ババア』そう言おうとして、自分の声が聞こえないかもしれない事を思い出す。
本体に、戻れるか?
戻らなければ、五月蝿いババアに『勉強もしないで寝ているの』とかほざかれるだろう。
それは、ムカツク。

とん、とん、とん、階段を上る音。
戻れ、私。
これで、病院にでも送られたら如何するんだ、私。
明日のテストしなくて済むじゃないか、私。
いやいやいや、違うだろう。テストはしなくて済むけれど、起きた時にババアにぶつぶつ言われるだろ、私。

がた、扉が開いた。

「あら、ゆか。ちゃんと勉強してたのね」
「お前がやれって言ったんじゃん」
「返事がないから、寝てるのかと思ったのよ。もうすぐご飯できるから、降りてらっしゃい」
「はいはい」

ぱたん、扉が閉まる。

「やっほー」
『あんた、なんで、動いてんの・・・・?』

本体の私は、『私』を無視して動き出した。
別に、二重人格だとかそんなものではない私に、二人分の精神?
可笑しいだろう。
ぶんぶんと頭を振って、ちらりと見えたベッドの脇にあったのは、いつだったかババアと喧嘩して、少し皹の入った青フレームの鏡。
そこに映っていたのは寝たままの、つい先ほどまでの私の姿。
本体は意気揚揚と、小説を手に取った。
題名は『罪と罰』。
私は一体、何をしたというのだろう。

信じられないようなことがあった1日。
私は本体に戻れないまま、いつの間にか足のもやもやは晴れていて、そこで初めて幽霊、というか、生霊、というのか?
そんなものには足があることを知った。

意外と冷静だった、安藤ゆか、15の春。
そんなものなのだ。

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ぶんさいくだせえ。

え、いつもの如く、続きません。
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