ふね

さあ、どこまでも走らせよう。
船の舵は誰でもない、私だけが握っていて、例えば其処には小箱がある。
それを開く鍵は、残念ながら私は持っていなくて、それを持っているのは、ひよこだったり、するわけなのね。
けれど、そのひよこは死んだように眠っていて、そいつを起こせるのは狼だけ。
鍵のありかを知ってるのはひよこしか居なくて、狼はひよこを起こす為ならなんだってする。
だけど、その狼は、酷く警戒心が強いわ。
信じるかしら、私の話を？
これは童話よ。
よく似た話が幾つもある。
信じるかしら、狼は？

判らないのよ。
それがいいんじゃない。

これは童話よ。
童話は終わらせなくてはならないの。
だって、その童話の最後を待っている子がいるんです。
例えば、桃色の髪をした、可愛い可愛い女の子が。

さあ、どこまでも走らせよう。
走らせるのは船よ。
小箱を乗せた小さな船。
他に乗れるのはひよこと鍵と狼だけのような、小さな船。
それで、ちょうどいいわ。

おも舵一杯。


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狼とは拳で分かち合うといい。