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 日記つけたら? と、サクラが言った。二人で日記帳を買いに行った。サクラはそのことを覚えているだろうか、いつまで、覚えているだろうか。


四月三日

 二人で手をつないで外に出た。ナルトとサスケ君と偶然逢う。サクラは、ナルトを見て、久しぶりね、と笑っていた。昨日会ったばかりだけれど、覚えていないらしい。昨日逢ったばかりだってばよ、とナルトが言うと、逢ってないわよ、と、少し怒っているようだ。サクラは最近、若返りの術を使わない。師匠直伝の、だ。
 そういえばいつだったか、額の皺が増えていくサクラに、師のように術を使えばいい、と言ってやったら、私はこの方が良いわ。皺の分だけナルトやサスケ君が好きなのよ、と笑っていたことがあった。それでもそれから術を使うようになっていたところをみると気にしていたらしい。当然と言えば当然だろうか。
 しきりに名前を呼ばれることがある。サイ、サイ、と呼ぶものだから、何、と聞き返すと、ふい、と顔を反らされる。色の褪せた桃色を手でもって透いてやったら、触らないでよ、と怒られた。ナルトやサスケ君には叱るのに僕には正当性なく怒るのは何故なんだろう。彼女と付き合ってからの長年の疑問だ。サクラがナルトとサスケ君のお母さんで、僕の母ではないからだろうか。自分の子供を育てるよりもナルトを育てる方が大変だと大きな声でぼやいている。

四月四日

 ナルトとサスケ君とサクラと僕で、花見に行った。四人とも呑む方だから、酒の量は半端ではない。途中何人か、里の皆が挨拶してきた。火影を退いてもナルトは人気だ。少し、サクラとサスケ君の機嫌が悪くなる。まるでエスと自我と超自我のようだと思う。ナルトがエス。子どものように我が儘で、けれどあの三人を繋ぐものとして欠けてはならない。サスケ君が自我。ナルトが暴走しないように、例えば、遊びすぎて火影の仕事に支障を来さないようにしていた。そして、サクラが超自我。ナルトとサスケ君が二人でもって暴走、痴話喧嘩を始めたりしないように、二人のバランスをとる。僕はいつだって蚊帳の外だ、と云ったら、サクラはニッコリ笑っていた。君は最初に僕から忘れていくのかな。

四月十日

 少し日にちが開いてしまった。日記どころじゃなかった。サクラが、家を出て行ってしまったのだ。もっともそれ自体は全くなんともなかったのだけれど。
 気配を辿ってサクラを捜すと、里の境の椅子に寝転んでいた。一緒に捜索に行ったサスケ君が、苦い顔をして、記憶退行か、と呟くと、サクラはケラケラ笑っていた。「ごっこ遊びよ」里抜けって気持ちがいいの? サクラの頬には涙のあとがあって、だから、ただのごっこ遊びではなかったのだろう。もしかしたら、泣いていたのかも知れない。いつ無くなるか、いつ蘇るか、コントロール出来ない記憶の拙さに。いきなり居なくなるとびっくりするよ。と窘めると急に顔つきが真剣になって、サクラはサスケ君を見据えた。びっくりなんてしないわよ、ただ凄く虚しくなるけど。私は必要なかった? ナルトは必要なかった? ごっこ遊びよ。
 そこに僕が入る隙間は少しもなくて、ねえ、サクラ、虚しくなったのは、僕だよ。

四月十五日

 水墨画を描いていたら、後ろからサクラに日記を突き出された。すごい剣幕で怒鳴るサクラは、そんなもん書くよりも日記書きなさいよ! 私を残してよ、私が居た証を残してよ、消えちゃう。と、最後には泣き出した。驚いた。
 サクラはちゃんと解っていた。段々自分が忘れていくことを理解していた。ものすごい恐怖だっただろう。自分が朝ご飯を食べたのかどうか忘れてしまう。身近なものが解らなくなる。同じことをなんども繰り返し言うようになる。けれど、言ったことは覚えていない。もう老い先は長くはないと、言われているように思ったのかも知れない。

※※※

途中投下。
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