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 ちっちゃくってコロコロした宝石みたいなチョコレートをひとつ、口の中に放り込んで。ああ、すっぱい。包み紙を見ると、カサカサなる音、黄色。レモンだ、と酸味を認識した。汚くて、汚くて、どろどろ溶けてしまいそうだ。どろどろ溶けてしまいたい。笑えるほど笑えないどん詰まり、何がしたいんだろう。わからないままで、チョコレートをもうひと粒。何にも考えてなかった訳じゃないのに、と自分に言い訳をして、泣いた。卑怯だ。最低だ。最悪だ。アイツが悪い、全て悪い、言えるなら、私はこんなにぐしゃぐしゃにはなっていなかった。気付いて、自嘲する。チョコレートは、噛み砕けなかった。溶けて、溶けて。

「なんで、いないの、よ」

 目覚まし時計を、握りつぶさんばかりに取り上げる。投げる。声はかすれて、腰は震えて、バカみたいだ。居て欲しかったのか、自問して、何方とも言えずに、またため息。枕元にばらまいた色とりどりのフルーツチョコレートが、ぼやけた。

「なんでいないのよ無神経朴念仁能面……ッ」

 他の人なら良かったのか、例えば、例えば、例えば? ヒィ、と喉がひきつる音がして、気管に唾液が入る。苦しくなって、咳をして、涙も鼻水も出てきて、全部裸の太腿に落ちた。つるつるの真赤な掛け物を素肌に引っ掛ける。
 きっと汚い顔だ。シャワーを浴びたい。サクラが顔を上げる。と、そこには気配を消した気配が立っていた。え、ハ、任務は、どう、したのよ、ばっかじゃないのばっかじゃないのばっかじゃないの!

「なんで泣いてるのかな……?」
「……ンで居るのよ!」
「君を抱いたから」
「は、ァ?」
「置いていったらいけない」

 そんな、答えが欲しかったんじゃない。どこでそんな人間じみた感情拾ってきたのよ、と心内で呟いて、元々持っていたなんて信じない、と、吐き出した。

「サクラ、顔が汚いよ」
「アンタが抱いたからよ」
「後悔しているのかな?」
「してるわよ、すっごい。これからどんな顔で、アイ、ツ、……ああ……あ、も、いい……。こうかいしてるけど、いい、平気、大丈夫」

 何よ、バカだ。今更気付いた、もしかしたら、喘いだ夜には気付いていた? 私はちゃんと愛せてる。愛してあげたいなんて思わなくても、しっかり愛せてる。悔やんだっていいんだから、これは、わたしの、恋愛マイナス恋、の過程だ。だめ、頭回らない。
 サイが、柄にもなく、桃の髪をなぜる。焦っているのかも知れない。何に? サクラが後悔していると言ったことにだろうか? 酷く今更なのに。だって、サクラはいつだって後悔の海を航海している。

「ナルトやサスケ君に合わせる顔がない?」
「ってちょっとおもったけど、でも、わたしは、アンタを愛せてるから、大丈夫」
「……すごいね」
「うるさい。……だめ、あったま痛い……寝るわ……」
「チョコレート仕舞わなきゃいけないよ」
「ねえ」
「ん? どうかした、サクラ?」
「アンタは、私を、愛せてる?」
「愛してるよ」

 任務を休んで、サクラの髪をずっと撫でていたいと思うほどには。

「任務」
「休んだよ」
「それって、今までで、何回めの欠勤?」
「初めてだよ」

 サイの指先で、紫の包み紙が、かさりと鳴った。
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